「ご主――アオイ」

 

つい癖で言い間違えてしまう。

 

俺を見ずにアオイは笑った。

 

「慣れないんだね、その呼び方。

 

普段からご主人って言ってたから?」

 

図星だ。癖だ。

 

名前で呼ぶには恐れ多かった方だ。

 

しかし、「アオイ」と

 

呼ぶように命じられれば、

 

それに従うしかない。

 













 

「ア・オ・イ!ほら、言ってごらん」

 

「アオイくらい言えるよ」

 

むっとした表情を浮かべてアオイを見返す。

 

「なら、間違えないようにね」

 

言葉に皮肉を込めたつもりだったが、

 

相手にされない。

 

怒っていることを分かってか否か、

 

アオイは首回りを手で撫でて来た。

 

これでは

 

…むむむ…逆らえない。

 

もっと、もっと撫でるのだ。

 

気を抜くといつもそう思ってしまう。

 











 

「で、なんだっけ?」

 

アオイの言葉で我に返る。何たる失態。

 

「うん。…アオイって、どうして

 

その服がそんなに欲しかったの?

 

それ、非売品でしょ?」

 

普段、万引きなどアオイはしない。

 

ましてや、服に

 

執着することなど前代未聞だ。

 

非売品の服を欲しがることなんて…。

 

アオイは普段着を

 

再び上から着て姿見を眺めた。