「あの、お願いがあるんですけど」

 

ややあって再び

 

アオイの声が聞こえた。

 

ちょっと鞄から覗き見てみる。

 

「何でしょうか?」

 

店員さんが

 

申し訳なさそうな表情をしたまま、

 

応対していた。

 

ご機嫌を取ろうとしているのが

 

鞄の中からでも、僅かに見える

 

表情や口調から感じ取れる。

 










 

「買うのがダメなら、

 

 せめて試着してみたいんですけど…」

 

低姿勢にアオイが店員さんに頼むと、

 

「ええ」と口にし、店員は笑顔を作った。

 

「それなら、勿論大丈夫ですよ。

 

 売れなくて申し訳ありません」

 

「いえいえ、とんでもない」

 

籠に入った服は

 

同じ種類の衣服が数枚入っている。

 

サイズ調整の為か。

 









 

アオイは店員に誘導されるまま、

 

試着室に案内された。

 

鞄を肩から降ろして

 

「ちょっと待ってて」

 

と小声が聞こえると同時に

 

頭を撫でられた。

 

店員がその声に対し首を傾げたが、

 

「ごゆっくりご試着くださいませ」と

 

頭を下げて店員はレジに戻っていった。

 

頭を撫でられるのは、

 

…ふむむ。悪くない。

 











 

「ありがとうございます。

 

 やっぱり欲しいですが、

 

 我慢しますね」

 

暫くしてアオイは試着室から出てきた。

 

鞄を肩からかけ直す時に、

 

俺はあることに気付いた。

 

籠を店員さんに手渡すと、

 

再び店員は頭を下げてきた。

 

「申し訳ございません」