誰もいないからか、

 

チェックアウトもせずに、

 

黙ったままホテルを出た。

 

十メートル程歩いた所で、

 

ウエストポーチから

 

カプセルを取り出す。

 

数メートル先にカプセルを投げると、

 

先程まで乗っていた二輪車が現れた。

 

それに跨り、

 

サイドミラーにかけたヘルメットを被る。

 











 

再びエンジンを起動させると、

 

道路を再び走り出した。

 

走っているご主人に向かって

 

話しかけようとする。

 

「ご主人」という言葉が

 

喉元まで来ていたが、

 

寸での所で口を閉じた。

 

落ち着いて再び声を掛けてみる。

 

「どうしたの?アオイ。

 

さっきからなんか変だよ」

 











 

周りに人は居ない。

 

それを確認してから尋ねてみた。

 

「あ、やっぱり?気付いた?」

 

ヘルメットの目元が

 

今は透明になっていたので、

 

ご主人…アオイが笑っているのが見えた。

 

「アオイの様子が

 

変だってことには気付いたよ。

 

でも、何をそこまで気にしてるの?」

 











 

尋ねたつもりだったが、アオイは

 

神妙な面持ちをしたまま口を噤んでいた。

 

少し街を見ながら走ったところで、

 

二輪車がゆっくりと減速し停車する。

 

パンフレットに載っていた

 

三ツ星ホテルのうちの一つが

 

目の前にあった。

 

写真で見るよりも綺麗な外観だ。