星が輝く夜空の下、

 

黒色の大きな車体を

 

月光がやんわりと照らし出していた。

 

大型二輪車のエンジン音が周囲に響き渡る。

 

一車線のみの道路は、

 

あまり整備されていなかった。

 

暗闇の中に光る星を眺めながら尋ねてみる。

 

「ご主人」

 

フルフェイスのヘルメットが

 

月光を反射して、目が一瞬眩む。

 





 

ご主人のヘルメットのシールドは、

 

マジックミラーで使用される

 

フィルムでコーティングされている。

 

「アオイで良いってば」

 

何度も言ってるだろう。

 

そう言いたいのが、口調から伝わってきた。

 

「ごめん、アオイ。

 

それでさ、まだ着かないの?

 

もう結構時間経つと思うんだけど」

 

「まだだよ。

 

景色が変わってくれないからねえ」

 





 

ご主人は呑気な口調で言った。

 

二輪車の速度がかなり速い。

 

そのせいで毛が乱れた。

 

ぐっと堪えて、鞄の中に身を隠す。

 

とてもではないが、

 

目など開けていられない。

 

風を肌で感じるのが

 

ご主人は好きだというが、

 

その気持ちは全く理解できなかった。

 

目が乾く上に、寒くて仕方がない。

 

俺専用のヘルメットがあればいいのに。

 





 

「何だ、あれ?」

 

声が聞こえたかと思うと、

 

アオイは急ブレーキをかけて

 

二輪車を停止させた。

 

タイヤの摩擦音が派手に鳴り、

 

急停車の反動が体を襲う。

 

「ちょっ…!

 

急に止まるのはやめ…。

 

どうしたの?ご主…アオイ」

 

何かに気付いたのか。

 

ご主人は肩からネイビーの

 

ショルダーバッグを提げていた。

 

俺はその鞄から

 

身を少し乗り出して見る。

 

ご主人はシールドを上げ、

 

目を見開くようにして一点を見つめていた。