しかし、客先の人間もこれまたダメな人だった。

 

あちらの部署にも新人が入ったのだろう。

 

それは分かるのだが、レビューを

 

客先の先輩社員もしていないのか、

 

誤字脱字だらけの上に、何を作ればいいのか、

 

不明瞭な仕様書だったのだ。

 

結局、頭を下げながら、

 

電話で客先に仕様書の内容を聞く。

 

 

何が必要で何が不必要なのか、

 

それを明確にしながら、

 

プログラム作成に漕ぎ着けていった。

 

プログラムを作成するのに、

 

在り得ないとは思ったが、

 

十日くらいでプログラムは完成した。

 

毎日残業し、寝る時間を削って

 

紙に書いて作成した結果だ。

 

 

丘田はもうすっかり

 

立派な社畜の一員として

 

会社で働いているなと思った。

 

プログラム作成の完了を

 

笹野課長に直接伝えると、

 

目を見開いて丘田を睨んだ。

 

「冗談だろう?」

 

笹野は手を振って

 

席に戻るように促してきた。

 

 

「いえ、本当です。

 

レビューしてくださらなくても

 

良いですが、万一、

 

問題が起こった時、

 

私だけの首では済まないと思いますよ」

 

プログラムは何度も見直した。

 

十回以上は見直し、

 

その度に仕様書を確認したのだ。

 

 

間違えているはずがない、

 

と丘田は自信を持っていた。

 

笹野課長が黙りこくって、

 

作成したプログラムをレビューする。

 

丘田は席に戻って、鞄から水を取り出した。

 

思えば、丘田はこの部署、この場所、

 

この席で水分を摂ることが初めてである。

 

周りの人達は普通に飲食をしていたのに、

 

丘田はそれすら今までする暇が無かったのだ。