変わっていたと言えば、もう一つ。
ミカンがミカンという名前の所以である。
どうしてミカンと名付けたのか。
それはミカンが蜜柑を好きだったから。
猫に興味の無い人からすれば、それがどうしたと思うだろうが…
猫は柑橘類の果物を嫌うのである。
鼻が悪いのかと動物病院に連れて行って
検査してもらうも、寧ろ鼻は良いと診断された。
だからそれを見た自分が、「この子の名前、ミカンでいっか」という案が
不覚にも親に採用され、猫の名前となったのだ。
もう少し考えて付けてあげれば良かったのかもしれないが、今となっては後の祭り。
工藤は言葉を接ごうとしなかった。
ただ、ミカンの毛を見つめたまま目を細めている。
ミカンは工藤にも当然のように懐いた。
工藤もまた、ミカンが好きだったのだろう。
家に来ては必ずミカンと戯れていた。
時にはキャットフードや爪とぎなど、
ミカンのために何かと買ってきてくれていたのだ。
工藤は家で猫を買えないから気にしなくていいと言っていた。
だからこそなのだろう。