工藤は表情を変えずに、さらりと語った。

 

唐突過ぎて意味が出来ずに立ち尽くしていると、彼は言葉を接いだ。

 

「俺がこの力に気付いたのは、今年の二月。衛の猫のミカンが死んだ時かな」

 

その頃と言えば工藤がショックの余り、学校を休んだ時だろう。

 

あの時の工藤の様子を自分は知らない。

 

いや、実際の所は自分もショックで人のことに気が回らなかっただけだ。



「ミカンが死んだ時、俺はかなりショックだった。

 

どうして、どうして死んだんだってずっと泣いてた。

 

ご飯も食べずにずっと、ずっとな」

 

一番端のクラスまで通り過ぎ、階段を降りて三階に向かう。

 

扉の窓に一瞬目をやりながら、工藤は四階での行動を繰り返した。

 

「俺はミカンの死に直結した蚊という存在を呪ったよ。

 

心の中で叫んだ。

 

この世から居なくなれって。

 

強く強く願った。

 

そんなことをしてもミカンが戻って来る訳無いのにな」

 

自嘲気味に工藤は笑う。

 

その笑顔でさえも、作っているものだと直ぐに分かるものだった。



「そしたら何が起こったと思う?

 

世の中に存在していた蚊の全てが滅んだんだ。

 

俺が願ったから、全て、死んだ――」

 

「そんな訳――」

 

「勿論俺もそう思った。

 

何かの偶然に違いないって」

 

工藤が顔を上げた時に、ふと彼の顔を見た。

 

見るべきでは無かった、と直ぐに後悔する。

 

彼の眼には鋭く深い、寂しげな光が宿っていたからだ。