「待てよ、工藤」

 

思わず声が口から突いて出る。

 

その声を聞いて体を硬直させた後、ゆっくりと自分の方に体が向いた。

 

「衛」

 

名前を呼ぶ工藤の声は震えていた。

 

どうしてここに居るんだと責めるような目を向けて。

 

「工藤、教えてくれよ。お前、何してるんだ?

 

 目の前で人が死んで、どうして平然と――」

 

「見たんだな?」



静かで冷たい声だった。

 

今まで聞いて来た彼の声の中で一番。

 

温度が全く感じられない彼の声は、別人のようだった。

 

吐息をついて目を伏せる。

 

しばらくして工藤は無言で頷くと、階段を上がって隠れていた自分に歩み寄って来た。

 

「もう、仕方が無い。衛にはこの際、全部話すよ」

 

ついて来て、と工藤が言う。

 

いつもと違う空気を纏う彼を少し怖いと思いながらも、彼の横に付いて歩いた。

 

階段を登り、再び四階へと歩き出す。



向かった先は自分達の教室では無く、別のクラスの教室だった。

 

扉の窓から教室の中の様子が見える。

 

工藤が一瞥すると、中で倒れる音がした。

 

工藤は教室内の様子も確認せずに、次のクラスへと向かう。

 

そして同じまた、同じことが起こった。

 

「俺にはね、一切手を触れずに、生き物を殺せる力があるんだ」