では、目の前で覆面の男達が死んだ理由が分からない。

 

そう、分からないから工藤を追いかけることでその理由が分かるのではないか。

 

足音を消しながら、工藤の後をゆっくりと追う。

 

工藤と一緒に行動したいのは山々だったが、

 

工藤が見せた先程の表情を思い出す度にその気持ちは掻き消されて行った。



意外にも階段で誰かとすれ違うことも無く、三階へ辿り着く。

 

四階は一年生、三階は二年生の居る場所。

 

銃声が時折、校内に響き渡る。

 

何処かの教室で自分の見たような惨劇が繰り返されていると思うと気持ちが暗くなった。

 

工藤はその音を聞いても動じずに、足を進めていく。

 

その時だった。

 

静かな声で「止まれ」と言う声が聞こえて来た。

 

恐る恐る自分の背後を振り返る。

 

後ろには誰も居なかった。

 

ゆっくりと息を吐き出して再び工藤の姿を確認する。

 

工藤が足を止めてそこに立ったままだった。

 

見えていないだけで、工藤の目線の先には誰かが居るのだろう。

 

コツコツと音が近付いて来る。

 

やがて工藤の背後に、覆面の男が現れた。

 

「どうしてこんな所に居る?」

 

やはり、仲間なのだろうか。

 

工藤は「トイレです」とぶっきらぼうに言って振り返る。



覆面の男は工藤の頭に銃を突きつけた。

 

「嘘を付くな、死ね」

 

その瞬間、思わず顔を反らし、目を固く閉ざした。

 

工藤が死ぬと思ったから。

 

しかし、銃声は鳴り響かない。

 

代わりに、ドサッと何かが床に落ちる音がした。

 

覆面の男が目を見開いたまま、倒れたのだ。

 

工藤は倒れた男に軽蔑するように一瞥するとその場を離れようとした。