「だから、戻ってなよ」

 

工藤は自分に背を向けて歩き始める。

 

吐き気を強引に抑えて、体勢を立て直した。

 

「俺も行く!」

 

「来るな!お前には死んでほしくない!」

 

「お前も一緒だろ?!」

 

「俺は死なない!」

 

「何で?!」

 

「理由なんてねえよ!」

 

「何で?!」

 

「だから――」

 

「答えに困るのか?!」

 

「うるせえ!とにかく、絶対に来るな!」

 

「嫌だ!」

 

「頼む!お願いだから!」

 

「嫌だ!」

 

周囲を気にせず、今の状況も考えずに工藤に訴えた時だった。

 

工藤が瞬時に口を押さえて来て、下唇を噛んで目を見て来た。

 

「頼むから、来るな」

 

工藤は自分から口を離し、廊下を歩いて階段を降りて行った。



今までで見たことも無い工藤の表情に、当惑していた。

 

どうして工藤は自身の身を大丈夫だと主張し、自分について来るなと言うのか。

 

理由がどう考えても分からなかった。

 

どうしようか迷いに迷った末、出した結論は工藤の後をついて行こうという決心だった。

 

短時間の間に行きついた答えは、一つの仮説。

 

外れていてほしいと思う気持ちと、

 

真実を確かめずにはいられないという好奇心が自分の行動を後押ししていた。

 

立てた仮説。



それは工藤が彼らの仲間であると言うこと。

 

在り得ないと最初は思ったが、

 

クラスメイトの一人が死んだというのに、工藤は平然としていた。

 

もしかしたら最初から彼が死ぬのは計画通りだったのではないか。

 

彼が死ぬのは分かっていたのでないか。